家を食べて、ときにはこの強度や資産価値まで下げてしまう、シロアリ。
このように、私たちにとっては脅威となるシロアリですが、じつは自然界ではとても弱く、天敵がたくさんいます。
この記事では、そんなシロアリの天敵をご紹介していきます。
なお、中には「天敵を利用してシロアリ対策をしよう!」と考えている方もいるかもしれませんね。
そのため、この可否についても触れていきますので、シロアリの駆除や予防を考えている方もぜひご参考ください。
ただ、すでにシロアリが発生しているなら早めに駆除をしないとどんどん被害が拡大するおそれがあります。
そのため、この場合は速やかに専門業者に相談するようにしましょう。
シロアリの天敵は多い!身近な生き物6選!
冒頭でもお伝えしたように、自然界においてシロアリはとても弱いです。
それゆえに、シロアリはコロニーを形成して、集団で生きています。
ただ、シロアリはタンパク質が豊富であることから、捕食対象とする天敵が多く存在するのです。
身近なところで見てみると、以下のような生き物がシロアリの天敵としてあげられます。
- クロアリ
- クモ
- ツバメ・スズメ
- ヤモリ・トカゲ・ヘビ
- カエル
- モグラ
クロアリ
意外に思われる方も多いかもしれませんが、代表的なシロアリの天敵としてあげられるのがクロアリです。
「え?同じアリ同士なのに?」
名前がアリとなっているため、仲間だと思っている方も多いでしょう。
しかし、シロアリとクロアリは別物なのです。
シロアリとクロアリの違い | |
---|---|
シロアリ | クロアリ |
![]() |
![]() |
・くびれがない ・ゴキブリの仲間 |
・くびれがある ・ハチの仲間 |
このように、よく見るとシロアリとクロアリは見た目が大きく違います。
最も特徴的なのは、くびれです。
シロアリにはくびれがありませんが、クロアリにはくびれがあります。
また、シロアリはゴキブリの仲間で、クロアリはハチの仲間となります。
つまり、そもそも生物学上の分類も違うのです。
そしてそんなクロアリは、木材を食べるシロアリとは違い、肉食昆虫となります。
そのため、クロアリにとってシロアリは捕食対象となるのです。
クモ
クモもシロアリの天敵です。
クモは肉食なので、シロアリを発見すると捕食します。
家でよく見られる種類としては、ハエトリグモが有名です。
大きさが10ミリ前後と小さく、ぴょんぴょんと跳ね回るクモです。
シロアリやコバエなど見つけると、飛びかかって捕食します。
また、西日本ではアシダカグモが見られますが、この種類もシロアリを捕食します。
なお、アシダカグモはゴキブリを主食とすることから、益虫として知っている方も多いかもしれませんね。
ただ、体自体はそこまで大きくありませんが、足が長いです。
そのため、全体で見ると手のひらほどのサイズとなります。
大きいことでグロテスクな見た目を強く感じるため、不快害虫としてのイメージを持っている方も多いでしょう。
ツバメ・スズメ
シロアリの天敵としては、ツバメやスズメといった鳥類もあげられます。
これらの鳥類は、シロアリの社会における羽アリという階級を主に捕食します。
羽アリは生殖の役割を持つ階級で、繁殖を目指して春から夏にかけてコロニーから飛び立ちます。
飛び立つ羽アリの数は、コロニーの規模にもよりますが数百匹から数千匹になることもあり、これをツバメやスズメといった鳥類がエサとして狙うのです。
実際、羽アリの群飛を待ち伏せするなんてこともあります。
ヤモリ・トカゲ・ヘビ
鳥類以外に、爬虫類もシロアリの天敵としてあげられます。
具体的には、ヤモリやトカゲ、またヘビなどです。
これらの爬虫類の多くは肉食また昆虫食なので、シロアリを捕食対象とします。
実際、ペットとして飼われている爬虫類のエサとして、シロアリが販売されているくらいです。
カエル
両生類であるカエルも、シロアリの天敵です。
カエルの主食は昆虫で、もちろんシロアリもその対象となります。
先ほど、シロアリは爬虫類のエサとして販売されていることに触れましたが、カエルについても同じです。
生きたシロアリが、ペットのカエル用のエサとして販売されていることもあります。
モグラ
シロアリの天敵としては、モグラもあげられます。
地面の中で生活するモグラの主食は、ミミズやコガネムシの幼虫などの昆虫となります。
そのため、地面の中にコロニーを形成するシロアリも捕食対象となります。
ちなみに、シロアリの中でも地面の中にコロニーを形成するのはイエシロアリです。
そのため、とくにこのイエシロアリにとっては、モグラは脅威になるといえます。
日本では見慣れないこんな生き物も!
ここまでは、シロアリの天敵として比較的身近な生き物をご紹介してきました。
ただ、日本では見られませんが、以下のような生き物もシロアリの天敵としてあげられます。
- アリクイ
- ツチブタ
- センザンコウ
- アードウルフ
アリクイ
アリクイは、草原や湿地、また熱帯雨林などに生息している生き物です。
アリクイについては、アリを主食とするということを知っている方は多いでしょう。
しかし、じつはシロアリも例外なく、捕食対象とします。
朽木などにいるシロアリを、長い鼻と舌を使って、舐めとるように捕食します。
また、以下のようにアリクイは大量のシロアリを捕食するのです。
1日に3000匹ものシロアリを食べる
引用:野毛山動物園
まさに、アリクイはシロアリの天敵といえるでしょう。
ツチブタ
シロアリの天敵としては、ツチブタもあげられます。
ツチブタは、アフリカに生息している生き物です。
ブタのような鼻やカンガルーのような尾を持っていますが、いずれの仲間でもなく独自のツチブタという分類になっています。
そんなツチブタの好物が、シロアリやアリなのです。
アリクイのように、長い舌を使ってこれらを捕食します。
センザンコウ
センザンコウもシロアリの天敵です。
アジアやアフリカに生息していて、ウロコを覆っていますが哺乳類に分類されます。
そんなセンザンコウの好物もシロアリやアリで、アリクイやツチブタと同じように長い舌を使って捕食します。
なお、なかなか聞きなれない名前のセンザンコウですが、世界で見ると密猟が多いことで知られる生き物です。
アードウルフ
シロアリの天敵としては、アードウルフもあげられます。
アードウルフとは、アフリカに生息するハイエナの一種です。
なお、ハイエナの一種ということで、「主食は動物の肉じゃないの?」と思われる方も多いでしょう。
もちろん、これも正解です。
しかし、アードウルフの主食はシロアリなのです。
さらに、なんと以下のように大量のシロアリを捕食することもあるのです。
一晩に20万匹食べることもある
引用:株式会社バイオーム
そのため、シロアリにとってはこのアードウルフは大きな天敵といえるでしょう。
天敵を利用してシロアリ対策をするのは現実的ではない
シロアリにはたくさんの天敵がいます。
そのため、「天敵を利用すればシロアリ対策をおこなえるんじゃないか?」と思われる方も多いかもしれませんね。
しかし、結論からいうとこれは現実的ではありません。
というのも、以下のような理由があるからです。
- シロアリは蟻道の中で生活&群飛する羽アリはわずか
- 女王アリの繁殖力が高い
それぞれを詳しく見ていきましょう。
シロアリは蟻道の中で生活&群飛する羽アリはわずか
シロアリの天敵を利用しての対策が現実的ではない理由のひとつとしては、そもそも見つかりにくいということがあげられます。
シロアリは、基本的には地面の中、とくに通り道として自分で作った蟻道の中で生活をします。
そして、そんな蟻道から家に侵入して、木材を食べるという被害を及ぼします。
そのため、いくらシロアリに天敵が多いといっても、そもそも見つかりにくいのです。
唯一天敵や私たちの前に姿を現すのは、繁殖を目指して飛び立つ羽アリになります。
しかし、飛び立つ羽アリの数自体は数百匹から数千匹と大量になることもありますが、それでもこれはコロニー全体における数パーセント程度のシロアリです。
そのため、羽アリを天敵に何とかしてもらったところで、大きな効果は期待できないのです。
女王アリの繁殖力が高い
天敵を利用してシロアリ対策することが現実的ではないもうひとつの理由は、女王アリの繁殖力が高いためです。
シロアリの女王アリは、なんと毎日数百個もの卵を産みます。
そのため、天敵によってシロアリの数が少し減っても脅威とはならず、コロニーの存続が難しくなることはないのです。
実際、家へ被害を及ぼすシロアリとして知られるヤマトシロアリは数万匹、イエシロアリに関しては100万匹になることもある数でコロニーが形成されています。
また、万一女王アリに何かあっても大丈夫なシステムにもなっています。
というのも、女王アリの控えとなる副女王アリのシロアリもいるのです。
そのため、もし女王アリが死んでしまっても、この副女王アリが新しい女王アリとなることで、卵を産み続けることができるのです。
このように、シロアリは高い繁殖力を持ちます。
そのため、天敵を利用したとしても、前述のようにシロアリは見つかりにくい場所で生活していることもあり、完璧に対策することは現実的ではないのです。
シロアリ対策は他の弱点を狙っておこなおう
シロアリの天敵を利用しての対策は現実的ではありません。
しかし、じつはシロアリには他にも弱点があり、これを狙って対策を打つことは可能です。
そんなシロアリの天敵以外の弱点としては、以下のようなことがあげられます。
- 乾燥
- 日光
乾燥・日光に弱い
シロアリの弱点としてあげられるのは、乾燥と日光です。
実際、乾燥した場所や日光の当たる場所では、シロアリは生きることが難しいのです。
というのも、シロアリは皮膚が薄いという特徴を持っています。
この特徴により、シロアリは乾燥や日光のダメージを受けやすく、水分を奪われて死んでしまうこともあるのです。
そのため、すでに触れていますが、シロアリは基本的には地面の中、また蟻道の中で生活をしています。
つまり、シロアリは湿気が多くて暗い場所を好むということです。
ではこれらのことから、シロアリ対策として自分でどのようなことができるのかを見ていきましょう。
自分でできるシロアリ予防
自分で簡単にできるシロアリ対策としては、以下のようなことがあげられます。
- 家の床下の風通しをよくする
- 基礎の周りに物を立てかけない
- 家の周りに物をできるだけ置いておかない
家がシロアリの被害にあうときは、地面から床下へ侵入されて木材を食べられるケースが多いです。
そのため、床下をシロアリが好む環境にしないようにすることを意識しましょう。
まずは、床下の風通しをよくすることが対策のひとつです。
具体的には、換気扇を設置するといった方法で、予防が期待できます。
また、家の基礎の周りに物を立てかけないことも対策のひとつです。
基礎の周りには通気口がありますが、そこを塞いでしまうと床下をさらに暗く湿気の多い場所にしてしまうおそれがあります。
そして、そもそもシロアリは自然界にはどこにでもいるため、家の近くに寄り付かせないようにすることも大切です。
具体的には、家の周りに物をできるだけ置かないようにすることが対策となります。
とくに、ダンボールや古紙、また朽木などは、シロアリにとってエサとなります。
そのため、これらはできるだけ家の周りに置かないようにしましょう。
シロアリが発生しているなら専門業者に!
「シロアリが発生している!」
「シロアリの被害にあっている!」
もしもこのように、家ですでにシロアリを見かけたり床下で木材が食べられていたりするなら、速やかに専門業者に相談するようにしましょう。
中にはシロアリ駆除を自分でおこなうことを考える方もいるかもしれませんが、これでは確実な解決にならないおそれがあります。
というのも、シロアリ駆除は生態や種類、具体的な被害場所や状況などをしっかり把握したうえで、適切な方法でおこなう必要があるのです。
つまり、専門知識や専門技術が必要であるということ。
また、実際にシロアリ駆除をおこなう際には、もちろん専用器具も必要です。
このように、シロアリ駆除を一般の方がおこなうことは、そもそも難しいのです。
そのため、シロアリの発生や被害が確認できたなら、速やかに専門業者に相談するようにしましょう。
また、前述で自分でできるシロアリの予防対策について触れましたが、これも一般の方がおこなうと不十分となってしまうことがあるかもしれません。
そのため、現状目に見える問題がなくても、しっかりと予防対策をおこないたいなら、一度専門業者に見てもらうことがおすすめです。
【Q&A】シロアリが嫌いなものとは?ヒノキが苦手?
ここまでは、シロアリの天敵や弱点となる環境などについてご紹介してきました。
ただ、シロアリの嫌いなものを調べてみると、他にもいくつか出てきますよね。
しかし、中には「これ本当?」といったものもあるでしょう。
そこでここでは、その真偽を確かめていきます。
ヒノキ
シロアリの嫌いなものとしてよく目にするのが、ヒノキです。
実際、家を作るうえで、「シロアリの被害にあわないようにするためにはヒノキを使おう!」と推奨されていることがあります。
なお、確かに防蟻性はあるとされています。
しかし、以下のように絶対にシロアリの被害にあわないわけではないのです。
防蟻処理をしなければ、ヒノキといえどもシロアリの餌食になる。…確かにヒノキは防蟻性に優れているかもしれない。しかし、それを過信して木部や土壌の防蟻処理を怠ると、大きな蟻害を招くことになりかねない
引用:日経ホームビルダー
そのため、ヒノキは完璧なシロアリ対策アイテムであるとは思わないようにしましょう。
炭
シロアリの嫌いなものとしては、炭もよく目にします。
ただ先にお伝えすると、炭はシロアリ対策としての効果はありません。
炭には湿度を吸収する特徴があり、確かにこれを聞くと「シロアリの弱点となる環境にできそう!」と思いますよね。
しかし、実際はシロアリが炭を食べて貫通するという実験結果があるのです。
公益社団法人日本木材保存協会に、イエシロアリの巣にレンガを乗せて、そのうえに木炭を敷き、さらにその上に好物の木材のベイツガを乗せて、このベイツガを食べるかどうかの実験データが報告されています。
これによると、とくに木炭を避けることなく、さらには木炭を貫通してベイツガにたどり着いたというのです。
(※参考:公益社団法人日本しろあり対策協会)
このことから、炭はシロアリ対策に効果はないといえるでしょう。
まとめ
家に甚大な被害を及ぼすこともあるシロアリですが、自然界ではとても弱い存在で天敵が多くいます。
しかし、天敵に見つかりにくい場所での生活と高い繁殖力により、シロアリは生き続けます。 そのため、シロアリ対策を天敵を利用しておこなうことは難しいです。
なお、シロアリは天敵以外に、環境においても弱点があります。
乾燥と日光が弱点となるため、これはシロアリの予防対策に役立てることができるでしょう。
ただし、すでにシロアリが発生して被害にあっているなら、できるだけ早い対応が求められます。
この場合は、被害を拡大させてしまう前に、専門業者に相談するようにしましょう。 また、シロアリの予防対策に関しても、専門業者であればしっかりと対応してくれますよ。