2022年1月、ゴキブリ界がガサゴソとざわつくニュースが届きました!
なんと、ゴキブリスト・柳澤静磨さんら研究チームが、新種のゴキブリを発表されたんです。
その名も「アカズミゴキブリ」。いったい、どんなゴキブリが記載されたのか、柳澤さんにお話を伺いました!
取材協力:磐田市竜洋昆虫自然観察公園
ゴキブリ属に新メンバー!「アカズミゴキブリ」加入
\柳澤静磨さん/
柳澤静磨さん。手にもっているのは、ブラベウスギガンテウスとヨロイモグラゴキブリ。
「アカズミゴキブリ」研究メンバーのひとり。ゴキブリストとして、ゴキブリの魅力を発信されているナイスガイです。
「りゅうこん」の名前で親しまれている昆虫館「磐田市竜洋昆虫自然観察公園」のスタッフとして、企画展「ゴキブリ展G(グレート)(2019年開催)」や「ゴキブリ展3(2020年開催)」を手掛けられています。
2022年は、2月5日(土)~4月3日(日)の期間で「ゴキブリ展 -5G-」を開催。55種以上の生きているゴキブリたちがお出迎えしてくれますよ!
(Twitter/HP「ゴキブリ屋敷」)
※記事内のゴキブリの写真はすべて柳澤静磨さんによる撮影
新種のゴキブリは、西表島で発見!
アカズミゴキブリ Holotype。
昨年に引き続き、新種のゴキブリを発表ということで、Gファンにとってはワクワクするニュースが続いています。
さらに今回は、「ゴキブログ」でお馴染みの小松謙之先生(シー・アイ・シー)も一緒に研究されており、ゴキブリ界のエースが揃い踏みです!
ゴキブリ編集部としては、興奮せざるえない発表です!さっそく、インタビューしていきましょう。
―――今回発表された「アカズミゴキブリ」は、どういったきっかけで研究をスタートされたのですか?
柳澤静磨さん
「アカズミゴキブリ」の研究のきっかけは、今回共著者でもある私の友人の大北さんと一緒に西表島にてゴキブリの調査をした際、山の中で見たことないゴキブリを見つけたところから始まりました。同じ島にいるウルシゴキブリとは見た目が全く違った為、日本ではまだ見つかっていない種類、または新種のゴキブリではと考えました。
おお!偶然の出会いだったんですね。
柳澤静磨さん
帰宅後、小松さんにメールでそのことをお話しすると、小松さんも同じゴキブリの標本を持っており、それであれば、ぜひ三人で論文を書きませんかというお話をさせていただきました。そこから細かい特徴を観察したところ、これまで見つかっていない新種であるとわかりました
「アカズミゴキブリ」の特徴
引用:Yanagisawa, S., Ohgita, S. & Komatsu, N.. 2021. Periplaneta kijimuna sp. nov. (Blattodea: Blattidae) from Iriomote-jima, Japan. Japanese Journal of Systematic Entomology, 27(2): 224-226.
―――成虫(オス・メス)の体の特徴やサイズを教えてください。
柳澤静磨さん
「アカズミゴキブリ」はオスの体長が39.5mmほど、翅も含めた全長が42.1 ~ 45.3mmの大型のゴキブリで、雌雄共に翅が長いのが特徴的です。前胸背板は赤っぽい黒色をしていて、前翅は透き通った赤みのある茶色をしています。
ビッグサイズですね!クロゴキブリは25~30mmなので、ひと回りぐらい大きい。
名前の由来
―――名前の由来(和名・学名)を教えてください。
柳澤静磨さん
和名のアカズミは前胸背板の色彩から、学名のPeriplaneta kijimunaは、森林内の樹幹上で見つかっていることや、前胸にある赤い斑紋、赤みのある翅をもつことから、沖縄県に伝わる赤い髪を持った木の精霊、キジムナーに由来しています。
ステキな由来ですね。キジムナーのように、出会えたら幸せになれるかも(*´▽`*)。
そういえば、2021年に小松先生が発表されたツヤアカゴキブリ(Periplaneta gajajimana sp. nov.,)も赤い色をしていました。南の方に生息しているゴキブリは赤くなる傾向があるんでしょうか。
柳澤静磨さん
本州に住んでいるクロゴキブリも赤みがあったり、南に住んでいるウルシゴキブリは黒が強かったりするので、あまり関係ないのではと思っています。
生息地
―――「アカズミゴキブリ」は、普段どんな場所に暮らしていて、何を食べているのでしょうか。
柳澤静磨さん
現在見つかっているのは西表島の森林内のみです。食性は詳しくはわかっていません。
なるほど。自然の中で暮らすゴキブリの食生活は、豊かそう…なんて想像しちゃいますね。
「アカズミゴキブリ」は飛べる?
大きな翅をもつ「アカズミゴキブリ」。
―――大きな翅を持つ「アカズミゴキブリ」ですが、飛ぶことはできますか?
柳澤静磨さん
はい、とても飛ぶのがうまいようです。採集した際、ギリギリ手が届くかなという高さにいた個体をジャンプで採ろうとした際、翅を広げて飛びました。10~20mくらいは飛んだように思います。
飛ぶ姿、見てみたいです。カッコいいだろうな~(*´▽`*)
「アカズミゴキブリ」はクロゴキブリ似!?
―――「アカズミゴキブリ」はゴキブリ属ですが、クロゴキブリに似ているのもそれが理由なのでしょうか。見分け方などはありますか?
柳澤静磨さん
はい、この仲間はみんな似た形をしていますね。見分け方としては、翅の長さや、オスの肛上板の形状で見分けられます。クロゴキブリやウルシゴキブリの肛上板はほとんどまっすぐですが、「アカズミゴキブリ」はWの形をしています。
―――幼虫や卵鞘もクロゴキブリと似ているのでしょうか。
柳澤静磨さん
卵鞘はどちらかというとワモンゴキブリに似ています。幼虫は胸に二つ、三角形の黒い模様があるので、他の種類とは少し違いがあります。
研究で大変なのは論文の執筆、繁殖は?
「アカズミゴキブリ」の終齢幼虫。
―――研究を進める中で、大変だったことを教えてください。
柳澤静磨さん
毎回同じではあるのですが、論文を書くことが大変でした。
―――繁殖は難しかったですか?飼育で工夫されたことなどがあれば、教えてください。
柳澤静磨さん
繁殖自体は、そこまで難しくありませんでした。
飼育は、大きなゴキブリなので、大きなケースを用意したり、樹幹上で見つかっていることから登れるところを用意したりという工夫は必要でした。当然ですが、飼育は初めての種類だったので、うまく幼虫が育ってくれたのはとてもうれしかったです。
「アカズミゴキブリ」最大の魅力は大きさ!
―――柳澤さんが考える「アカズミゴキブリ」最大の魅力を教えてください。
柳澤静磨さん
スタイルのよさですね。大きさもさることながら、翅や肢、胸のバランスが素晴らしいです。私は間違いなく日本で一番カッコいいゴキブリだと思っています。胸と翅の色の違いもポイント高いです。
ゴキブリ展にも登場する?
―――今年で5回目となる「ゴキブリ展」にも登場しますか? GKB48のメンバーにも選ばれている可能性もありますか!?
柳澤静磨さん
「アカズミゴキブリ」は、第5回GKB48総選挙に出場します。ゴキブリ好きの方はぜひこのカッコよさを見に来てください!
動く「アカズミゴキブリ」を間近に観察できるチャンスですね!!私も絶対、見に行きます!
まだまだ新種はいる!日本産ゴキブリ
今回の発表で、日本産ゴキブリは64種類になりましたね!今後、柳澤さんが研究したいゴキブリはいますか?また、繁殖にチャレンジしてみたい種はいますか?
柳澤静磨さん
実は現在も別のゴキブリについて研究しています。成果が出るのはもう少し先になりますが、楽しみにしていただけたら嬉しいです。繁殖にチャレンジしてみたい種類は、ミヤコモリゴキブリやエラブモリゴキブリでしょうか。
発表、楽しみにしています!
繁殖してみたいゴキブリは両種ともに、貴重なゴキブリのようですね。もし、飼育されるようになったら、ぜひ取材させてください!
インタビューを終えて
ちなみに、ニュースに掲載されている写真のホロタイプは、肢が折れているのかな?と思い、聞いてみたところ、
「採集時から折れてしまっていました。実は触角もほとんどありません。本当は体よりも長いので、もっとカッコいいのです。ホロタイプはできる限り完品を指定するのがいいのですが、他の個体よりもこの個体のほうがまだ綺麗だったため、肢と触角はないですが、この個体をホロタイプとしました」
とのこと。
完全体のカッコいい「アカズミゴキブリ」は、ぜひ「ゴキブリ展」で確認しましょう!
2020年のアカボシルリゴキブリ、ウスオビルリゴキブリから続々と発表が続く、日本産ゴキブリ。まだまだ、発見・発表されていない種もいるので、今後が楽しみですね。
企画展『ゴキブリ展』の詳細はこちらをチェック:磐田市竜洋昆虫自然観察公園
昨年の「THE・ゴキブリ展~ときめきの、その先へ~」の様子はこちら
磐田市竜洋昆虫自然観察公園
施設名 | 磐田市竜洋昆虫自然観察公園 |
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開園時間 | 9:00~17:00(最終入園16:30) |
休園日 | 木曜日、年末(12/28~12/31)※祝日、正月(1/1〜5)、GW(4/29〜5/5)、夏休み(7/21〜8/31)は開園 |
入園料 | 一般/大人330円、小中学生110円、幼児無料、ほか |
SNS | Twitter/Facebook |
住所 | 静岡県磐田市大中瀬320‐1 |
電話番号 | 0538-66-9900 |
アクセス | 土日のみ、磐田駅・豊田町駅から無料のシャトルバス運行中 |