ゴキブリに卵を産み付け、死に至らしめてしまうエメラルドゴキブリバチ。宝石のように美しいハチが、どのようにしてゴキブリを襲うのか? ゴキラボ編集部では、その生態を確認するために、エメラルドゴキブリバチの日本初展示をスタートした磐田市竜洋昆虫自然観察公園へ行ってきました!
取材協力:磐田市竜洋昆虫自然観察公園
ゴキブリの天敵・エメラルドゴキブリバチとは?
磐田市竜洋昆虫自然観察公園で展示中のエメラルドゴキブリバチ。
和名 | エメラルドゴキブリバチ |
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学名 | Ampulex compressa |
体長 | 15~25mm |
生息地域 | 熱帯地域 |
備考 | 体は硬く、飛翔能力あり。オスの方が小さい |
ゴキブリに寄生する天敵・エメラルドゴキブリバチ。その美しさから英名では「ジュエル・ワスプ(宝石バチ)」と呼ばれています。ゴキブリを狩り、毒を注入し、卵を産み付けるという、恐ろしい習性を持つハチです。彼らは、日本には分布しておらず、主に熱帯地域に生息しています。
今回は、日本で初めてエメラルドゴキブリバチの生体展示を始めた、磐田市竜洋昆虫自然観察公園で、お話しを伺ってきました!
\教えてくれるのはこの方!/
ゴキブリスト・柳澤静磨さん(磐田市竜洋昆虫自然観察公園職員)
Twitter/ブログ
国内外のゴキブリを飼育・収集されている柳澤さん。日本産ゴキブリの採集をライフワークにされており、ゴキラボも何度もお世話になっている、頼れるゴキブリストさんなのです。
過去に柳澤さんにご協力いただいた記事一覧はこちら
日本初の生体展示が見られるということで、とても楽しみにしています! まずは、展示されようと思ったきっかけを教えてください

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
狩りをするエメラルドゴキブリバチは、生体展示としてとても魅力的なんです。というのも、ゴキブリを襲って、穴に運んで、また襲う、と常に動き回っているので、見ていて飽きないんですね。それに動き方もユニークなので、来園した子どもたちにも人気があります
なるほど。たしかに昆虫の生体展示は、意外と動かないものが多いですもんね。展示を始めてから、お客さんの反応はいかがですか?

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
うれしいことに、10月上旬に展示し始めてから、すごく反響をいただいています。いろんな方が、見に来てくださっているんですよ
そうなんですね! エメラルドゴキブリバチの注目度がそんなに高まっているなんて驚きです。映像や写真でしか見たことがないので、ますます期待が高まります!

ゴキラボ・和田
産卵からふ化まで!エメラルドゴキブリバチの生体展示
エメラルドゴキブリバチの飼育ケース。

柳澤静磨さん
エメラルドゴキブリバチの飼育ケースには、現在メス2匹が入っています。一緒に入っているのはワモンゴキブリです。狩りをするタイミングが読めないので、ちょっと待ってみましょう
彼らが狩りを始めるまで待機します。せわしなく動くエメラルドゴキブリバチは、見ていて本当におもしろいので、待ち時間も気になりません。
観察を始めて、約1時間後…。ついに、エメラルドゴキブリバチが動きました!
【動画】エメラルドゴキブリバチが狩りをする瞬間
すごい! ゴキブリを一瞬で捕まえて、お尻の針で一突き! 想像以上に動きが早く、迫力満点です! エメラルドゴキブリバチは、ゴキブリが弱るまで何度か針を刺すのですか?

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
論文によると、エメラルドゴキブリバチはゴキブリに2回、毒針を刺すと書いてあります。まず、前胸部に1回刺して、前脚がしびれてきたところに、もう1回刺す。ただ、観察していると、一気に2回刺しているか、1度しか刺していないように見えるんですよね
なるほど。2回も毒針を刺して、ゴキブリをフラフラにしてしまうんですね。恐ろしい!

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
彼らは、ある程度ゴキブリに、毒が回るまでそっぽを向いているんですよ。しばらく待った後、ゴキブリの触角を切り落として、穴に運びます
毒で麻痺させた後に、触角を切ることで、完全に麻痺させてしまうんですね。ちなみに、彼らが狩るのは、ワモンゴキブリだけですか?

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
当園では、ワモンゴキブリのほかに、コワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、クロゴキブリ、ウルシゴキブリに産卵することが確認されています。成虫か幼虫かといえば、比較的、終齢幼虫が狙われやすいような気がします
意外といろいろなゴキブリに産卵するんですね。ゴキブリだけを狙う理由が、気になるところではあります…

ゴキラボ・和田
卵を産み付けられたゴキブリがズラリ…
エメラルドゴキブリバチに卵を産み付けられたゴキブリも展示されています。1匹ずつケースに入れられたゴキブリを見ていると、理科室の棚を見ているような気持ちに。
ビンに入れられたゴキブリがズラリと並んでいますが、これは…

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
エメラルドゴキブリバチに産卵されたゴキブリです。卵は、2~3日でふ化します。たまに無精卵を産みつけられていたりすると、徐々に麻酔が切れてきてゴキブリが復活することもあるんですよ
おぉ、まさに生き地獄…。この展示方法だと、ゴキブリを狩るシーンだけではなく、産卵後の様子も見られるんですね。なるほど。

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
ふ化した幼虫は、ゴキブリの胸部を食い破り、中に入ります。その後、ゴキブリは生きながらにして、ただただ食べられ続けられるんです
おぉ、ホラー映画のような状況ですね…

ゴキラボ・和田
エメラルドゴキブリバチの繭(まゆ)
エメラルドゴキブリバチの繭。

柳澤静磨さん
ゴキブリの体を食べて成長したエメラルドゴキブリバチの幼虫は、中で繭になります。このあたりで、ゴキブリはすでに死んでしまっています
幼虫が育つということは、ゴキブリの体は栄養が豊富なんでしょうね。それにしても、思いのほか繭のサイズが大きい。2cmぐらいありますね

ゴキラボ・和田

柳澤静磨さん
エメラルドゴキブリは繭の中で成長し、成虫になったらゴキブリの体を破って出てくるんです
ゴキブリの中で成虫になる、エメラルドゴキブリバチ…。恐るべし昆虫の世界!

ゴキラボ・和田
まとめ
今回は、柳澤さんのご協力があり、エメラルドゴキブリバチの狩りをするシーンを、撮影することができました!
実は、狩りをする瞬間は何度か観察されていたものの、動画撮影が成功したのは今回が初めてだったそうです。貴重な瞬間に立ち会えたことに、感激のゴキラボ編集部・和田なのでした。
柳澤さんのブログ「ゴキブリ屋敷」では、エメラルドゴキブリバチの飼育記録が更新されているので、ぜひ訪れてみてください!
※展示は変更、終了となっている場合があります。ご注意ください。
取材メモ
名前の通り、美しい姿をしたエメラルドゴキブリバチ。動くたびにキラキラと光る体は、一見の価値ありです。
ただし、展示期間は現在未定のため、エメラルドゴキブリバチを目当てに訪れたいという方は、展示期間中か確認の上、来園してくださいね。
参考元:『ゴキブリ屋敷』(柳澤静磨さん)
施設情報
施設名 | 磐田市竜洋昆虫自然観察公園 |
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開園時間 | 9:00~17:00(最終入園16:30) |
休園日 | 木曜日、年末(12/28~12/31)※正月(1/1~1/3)、GW(4/29~5/5)、夏休み(7/21~8/31)は全日開園 |
入園料 | 個人/330円(団体220円※20名様以上)、障がい者/110円、小・中学生/110円(団体50円)、障がい者/50円、幼児/無料 |
SNS | Twitter/Facebook |
住所 | 静岡県磐田市大中瀬320‐1 |
電話番号 | 0538-66-9900 |
アクセス | 土日のみ、磐田駅・豊田町駅から無料のシャトルバス運行中 |