ゴキブリが雑食であることは、みなさんご存じじゃろう。とはいえ、彼らには好物もあれば、食べ飽きることもある。「食」に関しては、人間と似ているところがあるようじゃぞ。ゴキブリの食を知ることは、より効果的な対策にもつながるんじゃ!

ゴキブリの好物とは?
ゴキブリは雑食なのでいろいろなものを食べますが、きちんと好みがあります。
ゴキブリの好物
- パン
- 蒸したジャガイモ
- 米ぬか
- バナナ
- 玉ねぎ
など
これらは、屋内で見られるゴキブリに共通する好物。一般家庭でよく見られるクロゴキブリなどの大型種も、飲食店や工場でよく見られるチャバネゴキブリも好んで食べます。デンプンが含まれた食物や果物などの甘いものは、ゴキブリの好物といえますね。
ゴキブリの種類によって、好みがわかれるものもあります。
クロゴキブリやヤマトゴキブリなどの大型種は、植物も好んで食べます。草や花、キャベツなどの野菜も食べますし、小さい虫も食べます。
対してチャバネゴキブリは、肉類を好み、水分が含まれたやわらかいものに食いつく傾向があります。
たまに、「ゴキブリは髪の毛も食べるって本当?」などといわれることがありますが、基本的には食べません。髪の毛以外に何にも食べるものがなければ食べる可能性はあります。

野外にいるゴキブリは、朽ち木や植物の果実、種子、樹液や小さな虫やその死骸を食べています。彼らは、人類が誕生する以前から、こうしたものを食べてきたのだと思われます。ちなみに、ボクは博士が焼いてくれる天然酵母パンが大好きです!
ゴキブリが誘引されやすい食品について詳しくは⇒『【実験】食品24種!ゴキブリが誘引されそうな味や食感をアース製薬・研究所で検証』
ゴキブリは餌の匂いにひかれるのか?味が好きなのか?
では、ゴキブリは、好物の「匂い」にひかれるのでしょうか? それとも「味」が好きなのでしょうか? 答えはどちらもです。ただし、「匂い」がしなくても「味」が好き、というケースもあります。
ゴキブリが餌を食べる場合は、
- 1.いい匂いに誘われて近づく
- 2.口で味を確かめる
という流れを経るのです。
『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)、『日本産直翅類図鑑』(学研プラス)から作成
いい匂いがする風上に向かって歩き、匂いが濃くなったところで、下あごから生えているひげのような部分でトントンと触って味を確認します。
彼らは、匂いだけでは積極的には噛みつきません。必ず味を確認します。
匂いがしないものの場合は、そこにあることに気が付かないので、たまたま近寄ってたまたま口で触る、ということがない限りは食べないでしょう。
ベイト剤(毒餌剤)の毒餌には、大抵、ゴキブリが好きな糖類が入っています。しかし糖類には匂いがないため、匂いのある誘引物質が一緒に配合されています。まず存在に気付いてもらわなければ、食べてもらえないわけですね。
ベイト剤について詳しくは⇒『ゴキブリを見ずに駆除!ベイト剤・捕獲器・くん煙剤・忌避剤の比較』
味の違いがわかる!グルメなゴキブリ
ゴキブリは、微妙な味の違いを感じることもできます。
実際に、ベイト剤にうま味調味料を入れた場合と入れない場合とでは、入れたほうが食いつきがよくなることがわかっています。あくまでイメージですが、私たちの感覚でいうと、かつお出汁なのかこんぶ出汁なのか、といった微妙な味の違いがわかるというレベルです。
『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)、『日本産直翅類図鑑』(学研プラス)から作成
ゴキブリは甘いものが好きですが、ゴキブリの種類によって、ブドウ糖がいいのか砂糖がいいのか、はたまた麦芽糖がいいのか……と好みが多少異なることからも、微妙な味の違いに反応できることがわかります。
実は味にうるさい(?)ゴキブリは、たとえ好物であっても、同じものばかりを食べさせると食べ飽きることが、以下の実験によって明らかになっています(辻,1995b)。
食べ飽き実験
1. チャバネゴキブリの成虫に、米ぬかと水だけを与えて18日間飼育した後に、米ぬかと乾燥果実(アプリコット)を並べると、乾燥果実を好んで食べた。

2. 同じゴキブリで、今度は乾燥果実と水だけで10日間飼育し、同様の組み合わせを並べると、今度は米ぬかを好んで食べた。

3. また同じゴキブリで米ぬかと水だけで5日間飼育し同様の反応を見ると、またもや乾燥果実を好んだ。
『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)、『日本産直翅類図鑑』(学研プラス)から作成
また、異なる好物を使用した実験においても、上記と同様に好みの関係が変化しました。
ゴキブリは、いくら好物であっても、同じものばかり食べ続けると飽きるのです。また、栄養バランスがとれるように適応しているとも考えられます。
ゴキブリの体には、5大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラル)が不可欠。ということは、ゴキブリは意外とバランスのとれた食生活を送っているのかもしれんのお。
家にいるゴキブリも、昨日はパンくずを食べたから、今日は生ごみの中にあったキャベツを食べよう、という具合に栄養バランスを上手に調節しているかもしれん。ワシもゴキワンも、好物のパンばかり食べていてはいかんなあ。

ゴキブリの腸には歯がある!?驚きの消化のしくみ
ではここで、ゴキブリがどのようにして餌を食べ、消化吸収しているのかをごく簡単に見ていきましょう。まず、食べ物の入り口である口元を見てみましょう。
『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)から作成
人間が何かを食べるときには、あごを上下に動かしますが、ゴキブリは、あごを左右に動かしてものを噛み砕きます。咀嚼する昆虫はあごを左右に動かして咀嚼を行うのです。
あごの奥には空洞があり、唾液の出る舌があります。そこを通り過ぎて飲み込まれた食べ物は、食道を通ります。そして、前腸・中腸・後腸と3つにわかれた腸の最初の腸である、前腸内の嗉嚢(そのう)と呼ばれる部分へと運ばれます。嗉嚢は、一時的に食べ物を蓄える袋の部分を指しています。
嗉嚢から前腸後部へと運ばれた食べ物は、「歯」で咀嚼されてから、一旦嗉嚢へと戻されます。前腸は腸という名がついているものの、もうひとつの口のような役割を果たすのですね。
以降は、中腸、後腸と進むしたがって消化吸収が行われます。
3つの腸
『The Principles of Insect Physiology』(Vincent B. Wigglesworth)から作成
以下は、3つの腸で食べ物が消化吸収される大雑把な流れです。
3つの腸における消化吸収の流れ
『The Principles of Insect Physiology』(Vincent B. Wigglesworth)から作成
ゴキブリは、消化液に含まれる消化酵素の種類が豊富です。野外で朽ち木などを食べる種類は、腸内の微生物の助けを借りて、人間が消化吸収できないセルロース(植物繊維)も消化できるんですよ。
ゴキブリは雑食ですから、さまざまなものを消化するための体制が整っているということでしょう。
ゴキブリの生態については⇒『ゴキブリを知る!クロゴキブリ(成虫)の体の構造・寿命・活動時間・隠れ場所』
ゴキブリは飲まず食わずで何日生き延びる?
ゴキブリが3億年前から生き続けている大きな理由は、いざとなったら何でも食べられる「雑食性」と「飢えに強い」ということ。
ゴキブリは、エネルギーを貯蔵する組織が発達しているため、餌がまったくなくても、水分さえあればある程度の期間生き延びることができるのです。期間は種類によって異なり、なかには1カ月半もの間生きられるゴキブリもいるのです。
『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)、『日本産直翅類図鑑』(学研プラス)から作成
では、水も餌もない場合はどうなるでしょうか。
水も餌もないとどのくらいで死ぬのか?
ゴキブリの種類 | 死ぬまでの日数 |
---|---|
チャバネゴキブリ (小型種) ![]() |
オス♂ 1週間 |
メス♀ 10日足らず |
|
ワモンゴキブリ (大型種) ![]() |
オス♂ 30日前後 |
メス♀ 40日前後 |
『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)から作成
チャバネゴキブリは水不足に弱く、オスは1週間、メスは10日足らずで全滅します。餌の欠乏に比較的耐えることのできる、卵鞘を抱えたメスも、6~8日で全滅します(夏季27°Cの条件下)。(辻,1995)。
クロゴキブリと同じく大型種のワモンゴキブリでは、オスは30日前後、メスは40日前後生き延びます(Willis&Lewis,1957)。
ゴキブリの生命力について詳しくは⇒『生態
ゴキブリを知る!クロゴキブリ(成虫)の体の構造・寿命・活動時間・隠れ場所』
まとめ
ゴキブリは、何でも食べる雑食ですが、きちんと好みがあります。
ゴキブリの好物
- パン
- 蒸したジャガイモ
- 米ぬか
- バナナ
- 玉ねぎ
など
ゴキブリの種類によって異なる好物もあり、一般家庭でよく見られるクロゴキブリなどの大型種は、植物や野菜も好んで食べます。対して、飲食店や工場でよくみられるチャバネゴキブリは、肉類を好み、水分が含まれたやわらかいものに食いつく傾向があります。
いずれにせよ、食べこぼしや生ごみを早く処理することは、ゴキブリ対策の基本です。彼らの好物を食卓や台所に放置しないよう注意してくださいね。
また、ゴキブリが餌を食べる場合は、
- 1.いい匂いに誘われて近づく
- 2.口で味を確かめる
という流れを経てから、本格的に食べ始めます。
『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)、『日本産直翅類図鑑』(学研プラス)から作成
こうしたゴキブリの性質をうまく利用したアイテムが、ベイト剤。いい匂いで誘って、毒入りの好物に食いつかせて殺すわけです。
家の中には、水とゴキブリの餌になりそうなものが常にあるので、彼らを餓死させるのは難しいと考えられます。ということはやはり、ベイト剤などの対策アイテムで退治するのがゴキブリゼロへの近道! 下記を参考にして、ゴキブリ対策を万全にしてくださいね。
おススメのベイト剤については⇒『最強ベイト剤ベスト5|最強ゴキブリ対策アイテムを編集部が徹底比較』
ベイト剤の設置方法等について詳しくは⇒『隠れゴキブリ一網打尽!ベイト剤(毒餌)の効果的な設置場所・時期・個数を徹底解説』
- 『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館)
- 『日本産直翅類図鑑』(学研プラス)
- 『The Principles of Insect Physiology』(Vincent B. Wigglesworth)