驚異の生命力!スーパーゴキブリ(抵抗性ゴキブリ)は殺虫剤が効かない!

投稿日: 2018/12/10

殺虫成分に抵抗性がついたチャバネゴキブリ

殺虫剤が効かない「スーパーゴキブリ」。そう聞くだけで背筋がゾッとする人もいるのではないじゃろうか?
たしかにスーパーゴキブリは問題になっておるし、その驚異的な生命力にはワシも驚くばかりじゃ。とはいえ、対抗策はある。スーパーゴキブリに対抗するためにも、どんなゴキブリが、どのようにして殺虫成分への抵抗性を発達させるのかを見ていこう!

スーパーゴキブリになるのはチャバネゴキブリだけ!?

殺虫剤が効かない「スーパーゴキブリ」は、言い換えると、「殺虫成分への抵抗性が発達しているゴキブリ」です。
※殺虫剤とは、ゴキブリ専用の駆除剤だけではなく、ハエやノミ、ダニなどのほかの虫をも駆除できる製品も含んでいます。

実は、一般家庭でよく見られるクロゴキブリなどの大型種では、殺虫成分への抵抗性はほとんど発達していません。スーパーゴキブリは、おもに、工場や飲食店で繁殖するチャバネゴキブリで問題になっているのです。

殺虫成分が効かないチャバネゴキブリ

殺虫成分が効くクロゴキブリ

殺虫成分が含まれたスプレー式駆除剤だけでなく、ベイト剤(毒餌剤)においても同じ問題が生じています。

殺虫剤の効き目を比較! クロゴキブリにはよく効いている

殺虫剤の効き目をクロゴキブリとチャバネゴキブリで比較した結果
(辻󠄀(2016),『衛生害虫ゴキブリの研究』(北隆館))より作図。β-シフルトリンという殺虫成分を添付したべニア板に強制接触させ、ノックダウン率(痺れてひっくり返る率)を比較した。

殺虫剤の効き目を、クロゴキブリとチャバネゴキブリそれぞれで比較した結果が上の図です。クロゴキブリにはオスメス関係なくよく効いていますが、接触時間8倍でもチャバネゴキブリのオスのノックダウン率は60%、メスにはまったく効いていません。
また、チャバネゴキブリのオスとメスとで効果が異なるのは、メスはオスよりも体が大きく、より多くの殺虫成分と長い接触時間を必要とするためだと考えられます。

どうしてスーパーゴキブリになるのか?

一体なぜ、チャバネゴキブリでは抵抗性が発達し、クロゴキブリなどの大型種では発達しないのでしょうか。それぞれの理由を見ていきましょう。

チャバネゴキブリの抵抗性が発達する理由

チャバネゴキブリで抵抗性が発達するおもな理由は、

  • 屋内の限られた場所で大量増殖する
  • 駆除業者などによって薬剤を大量に撒かれる機会が多い

といったことが考えられます。

チャバネゴキブリは、クロゴキブリなどに比べて一定期間に重ねる世代数が多く、殺虫成分による淘汰を受ける回数が多いのです。
繁殖力について詳しくは⇒『1匹いたら100匹いる?ゴキブリのやばい繁殖力!まさかの単為生殖も』

例えば、ある工場に数百匹のチャバネゴキブリが生息しており、殺虫剤を定期的に散布するとします。すると、大半のチャバネゴキブリは、撒かれた殺虫剤によって死にますが、大抵は、数匹の生存者が出ます。ほかのゴキブリの陰に隠れて少ししか殺虫成分に触れなかった、あるいは少ししか吸い込まなかった個体が生き残るわけですね。それらの生存者は、それぞれに次の世代を生んで増殖するので、また殺虫剤が撒かれる……と繰り返されるうちに、結果として、殺虫成分に強い個体が選ばれて、遺伝的な抵抗性が発達していくのです。

また、チャバネゴキブリは生育スピードが速いため、いったん99%を駆除できたとしても、抵抗性を備えた残りの1%が2カ月後には100倍近い数に増えます。

スーパーゴキブリの誕生過程

同じ殺虫剤を大量に、そして頻繁に撒き続けると、3年程度で効かなくなってしまうケースもあると博士がおっしゃっていました。冷静に考えると、人間自身が、スーパーゴキブリを続々と輩出してしまっているともいえるんですね。なんだかしんみり……。

クロゴキブリの抵抗性が発達しない理由

クロゴキブリなどの大型種で殺虫成分の抵抗性が発達しない大きな理由は、その大部分が野外に生息しているからです。毎年、新しいゴキブリが屋内に侵入してくる、というわけですね。

屋外から侵入してくるゴキブリ
侵入するゴキブリは毎回顔ぶれが異なる、殺虫剤に弱い個体。屋内に殺虫剤に強い個体がいても、交配により弱さが遺伝すると考えられる。

ただし、数多のクロゴキブリが生息する森に、殺虫剤が大量に撒き続けられるようなことがあれば、彼らの抵抗性が発達する可能性はあります。
侵入経路について詳しくは⇒『【専門家監修】ゴキブリはどこから入る?5つの侵入経路と防止対策』

スーパーゴキブリの抵抗性のしくみ

抵抗性が発達したゴキブリは、殺虫成分が効いていく過程のどこかで、中毒をくぐり抜けるしくみを備えています。抵抗性のしくみは、大きく3つに分けられます。

【抵抗性のしくみ1】神経などの作用点の変異による感受性の低下

殺虫成分が効果を及ぼす神経細胞などの反応が非常に鈍くなっているということを指します。いわば部分的な不感症です。
ちなみに作用点とは、命を守る大切な微細構造や成分です。殺虫剤はその働きを止めて昆虫を殺す働きをします。

感受性が低下している場合

感受性が低下して作用点が殺虫成分を受け付けないように変化しているが命を守る働きはそのまま。殺虫成分が効かないことがある

感受性が正常な場合

感受性が正常の場合作用点の大切な働きを殺虫成分が止めてしまう。殺虫成分が効く

【抵抗性のしくみ2】酵素による解毒

酵素とは、生物の体内で物質の合成、変換、分解を行っているタンパク質で、多数の種類があります。生物は、そのおかげで生存しています。
体内にそもそもある解毒酵素の活性が強い場合、殺虫成分が神経などの作用点に到達する前に毒性を分解して効き目を無効にします。

解毒酵素の活性が強い場合、作用点に到達する前に殺虫成分が別の物質に変身する

【抵抗性のしくみ3】皮膚の透過性の低下

皮膚が厚くなることなどによって強くなり、薬剤成分が浸透しにくくなります。鎧をまとうようなものですね。

皮膚が厚く殺虫成分が浸透しにくいゴキブリ

上記3つのしくみのいずれか、場合によってはすべてが起きて、遺伝的に抵抗性が発達していくと考えられています。

殺虫剤の中でもベイト剤(毒餌剤)においては、「ゴキブリが食べなくなる」という状態も抵抗性のひとつとして挙げられるんじゃ。食べない原因の多くは、「遺伝的なエサの好き嫌い」。
一時期アメリカで、「ゴキブリがベイト剤を食べなくなった!」と騒がれたんじゃが、このときの原因は、エサが嫌いな連中が生き残ったこと。ゴキブリが好きなブドウ糖をたっぷりと使っていたんじゃが、入れすぎたんじゃな。だから好きな連中だけが食べて死に、嫌いな連中が生き残り繁殖したわけじゃ。
もちろん、ベイト剤に含ませる殺虫剤を感じて食べない場合もあり、同じような結果となるんじゃ。

スーパーゴキブリとの闘い!殺虫剤の変遷

殺虫剤に使用される殺虫成分は、虫たちの抵抗性の発達によって、変遷してきました。

簡単にその歴史を振り返ると、まず、第二次世界大戦時から多くの国で使用されるようになっていたDDT、いわゆる塩素剤に対する抵抗性が、1950年代以降から世界各国で問題になりました。日本では最初にシラミの一種であるコロモジラミに抵抗性が生じ、次いで、イエバエやチャバネゴキブリなどにおいても抵抗性が生じました。

第二次世界大戦時にシラミやノミ対策で行われたDDT散布
おもにシラミやノミ対策に何度も繰り返されたDDT散布

そこで今度は、DDTとは異なる作用を持つ、リンを含む化合物である有機リン剤が殺虫剤に使用されるようになりました。ところが有機リン剤もまた、1960年代以降と早々に、チャバネゴキブリを含むさまざまな虫において抵抗性が問題になってしまいます。

その次に登場したのが「ピレスロイド」。ピレスロイドは、「除虫菊の花に含まれている天然殺虫成分ピレトリンに似せて作られた化合物」という意味で、実にさまざまな種類のピレスロイドが開発されました。
現在流通している殺虫剤にも、ピレスロイドは使われています。とくに、スプレー式のゴキブリ駆除剤には、必ずと言っていいほどピレスロイドが含まれています

―殺虫剤に含まれる殺虫成分の変遷―

塩素系(DDT)殺虫剤 1950年代まで主流

有機リン剤系殺虫剤 1960年代まで主流

ピレスロイド系殺虫剤 1970年代以降~

実はピレスロイドにおいても、チャバネゴキブリの抵抗性は発達しています。ですから、飲食店などで大量に繁殖しているチャバネゴキブリに、市販の殺虫剤を撒き続けても、効き目はあまり期待できません。

ピレスロイドが含まれた殺虫剤が効かないチャバネゴキブリ

対して、家に出るクロゴキブリなどの大型種にはよく効きます。市販の殺虫剤はおもに一般家庭用であることがあらためてわかりますね。

なかには、効かないなら殺虫成分を濃くすればいいのでは? と思う人もいるかもしれません。しかしながら、それは最終的には逆効果になります。最初は2、3倍、そのうちに4、5倍……と濃度を上げれば上げるだけ、抵抗性を発達させるという結果を生むのです。

ベイト剤には、忌避性の少ないホウ酸、ヒドラメチルノン、微量で有効なフィプロニルといった成分が配合されておる。ベイト剤にピレスロイドが使われないのは、ひとつには、忌避効果が逆効果になるからじゃ。ベイトは食いついてもらわないと意味がないから。
対して、殺虫成分が空中に舞う殺虫剤は、安全性が非常に大切。ピレスロイドは、安全性が高くてよく効くが、ベイト剤に使われている薬剤成分ほどの致死性はないんじゃ。

有効なスーパーゴキブリ対抗策

一般家庭によく出るクロゴキブリなどの大型種に関しては、抵抗性を心配する必要はありませんが、チャバネゴキブリの抵抗性にはどのように対抗すればいいのでしょうか。

万が一、ご自宅でチャバネゴキブリが大量発生し、お持ちの殺虫剤が効かない場合には、以下のような対抗策が考えられます。

殺虫剤をローテーションで使用する

例えば、5種類の殺虫成分を使用した殺虫剤がそれぞれあるとして、1種類につき3年で抵抗性が発達するとしたら、すべての殺虫剤への抵抗性が発達するのに15年かかります。あるもので何とかしのぐイメージですね。

使用する殺虫剤を3年ごとにローテーションする

ローテーションで殺虫剤を使用する際に注意したいのは、一度生じた抵抗性は維持される傾向にあるということ。上の例でいうと、最初の3年間に使用した殺虫剤を15年後に使用しても、効かない可能性が高いということです。

新たな作用の殺虫成分を使用する

これまでに使用した殺虫剤には含まれていない成分の製品を使うのも、ひとつの手です。

もっといいのは、新たな作用を持つ殺虫成分が開発されること。例えば、特定の農業害虫の駆除用として開発された、脱皮阻害剤「ジフルベンズロン」は、ゴキブリの幼虫の脱皮も阻害します。ジフルベンズロンに触れた幼虫は、脱皮に失敗して死亡するのです。残念ながら、ゴキブリ駆除用としての製品はまだありません。

脱皮に失敗するゴキブリ

しかし、これまで開発されてきた殺虫成分の多くが、抵抗性の歴史から逃れられていないことを考えると、脱皮阻害剤もまた、何年か経つと効かなくなる可能性はあります。

駆除業者に相談する

優良な駆除業者であれば、まず、どれくらいのチャバネゴキブリがいて、スーパーゴキブリなのか否かとしっかりと状況を見極めてくれるでしょう。その後、状況に合わせて数種類のプロ用殺虫剤を使用するので、市販品で対抗するよりも、速く、きっちりと駆除できる可能性があります。

部屋をチェックする駆除業者

ゴキブリ駆除業者への取材記事は⇒『【徹底取材】ダスキンのゴキブリ駆除サービス「ターミニックス」』

新薬を待つかチャバネが住めないかつての住環境に戻すか

今までと異なる新薬が発売されれば一番いいわけですが、残念ながら、なかなか発明されません。これは、待つしかありませんね。

また、住宅と言えば木造家屋が中心で、電化製品もあまりなかった時代には、住宅においてチャバネゴキブリが繁殖しなかったわけですから、当時と似た環境に戻すのはひとつの手かもしれません。現代の住宅は気密性に富んでいますし、冷暖房も整っているので、チャバネゴキブリが冬でも暮らせる環境なのです。
せめて、暖房をこまめに消す、使っていない電化製品の電源は切っておくといった心がけはしておきたいものです。

まとめ

殺虫成分が効かない「スーパーゴキブリ」は、工場や飲食店で大量繁殖するチャバネゴキブリについた称号です。

殺虫成分が効かないチャバネゴキブリ

チャバネゴキブリの抵抗性の発達は、ゴキブリの強靭な生命力を表していますね。殺虫剤という武器を生み出した私たち人間の知恵とゴキブリの生命力、はたしてどちらが勝るのか……まだまだ闘いは続いていくと思われます。

万が一、ご自宅でチャバネゴキブリが大量発生し、お持ちの殺虫剤が効かない場合は、
・殺虫剤をローテーションで使用する
・これまでに使ったことのない殺虫成分が含まれた製品を使用する
・駆除業者に相談する
・住環境を変える

といった対抗策を講じたほうがいいでしょう。

しかしながら、一般家庭でよく見るクロゴキブリなどの大型種では、抵抗性はほとんど発達していません。つまり現在のところは、家で遭遇するゴキブリには殺虫剤がよく効く、ということ。ですから、ご家庭では、お持ちの殺虫剤を安心して活用してくださいね。

殺虫成分が効くクロゴキブリ

まずは、もう2度と家の中で見ないために、ベイト剤や捕獲器、忌避剤を設置してゴキブリの侵入や繁殖に備えましょう。
詳しくは⇒『ゴキブリを見ずに駆除!ベイト剤・捕獲器・くん煙剤・忌避剤の比較』
そして、ゴキブリに遭遇したときには、スプレー式駆除剤を駆使すれば、ゴキブリ対策は万全です!

ゴキブリの生態や対策方法、気になる情報を発信中

Twitterでゴキラボをフォローする

関連記事

新着記事

キーワードから探す

Backtotop