1匹いたら100匹いるって本当?ゴキブリのヤバい繁殖力

投稿日: 2018/12/4

「1匹いたら〇〇匹いるって本当ですか?」というのは、これまでわしが受けてきた質問の中でもトップ3に入る質問じゃ。〇〇の中身は50だったり、100だったりと色々じゃが、増殖するイメージは同じ。そしてみなさんのご想像通り、ゴキブリには旺盛な繁殖力があるんじゃ!

単為生殖について語るゴキワン

ゴキブリの旺盛な繁殖力

ゴキブリは1匹いたら100匹いる! なんてことが言われますが、実は、彼らの繁殖能力はそんなもんじゃあありません!

ゴキブリは1匹いたら100匹以上いる!?

まずは、一般家庭でもっともよく見られるクロゴキブリについて見ていきましょう。

例えば、一般家庭でもっともよく見られるクロゴキブリの卵鞘(卵が入っている鞘)が、家の中に10個(メス成虫1匹あたり)産み付けられるとします。そのうちまったく孵化しない卵鞘が約10%ある(辻,1972)ため、9個の卵から幼虫が孵化するとします。正常な卵鞘には卵が20~26個入っていますが、そのうち、平均すると19匹の幼虫が孵化します(辻󠄀,2018)。よって、9個の卵鞘からは合計171匹の幼虫が発生し、メス成虫1匹あたり171匹の幼虫が産まれるという計算になります。

孵化幼虫19匹×孵化する卵鞘9個=幼虫171匹
※クロゴキブリの卵鞘ひとつから孵化する幼虫数は19匹前後とされているため(辻󠄀,2018)、ここでも19匹と仮定した。

もちろん、孵化幼虫の数が19匹以下の場合もあります。ましてやクロゴキブリは、屋内と屋外を自由に行き来しているので、屋外でも産卵します。ですから、この数すべてが家の中で生まれるとは必ずしも言えませんが、家の中にメス成虫が1匹いたら、次の世代には幼虫が100匹以上発生する可能性はあると考えられます。

1匹いたら100匹以上いるかもしれないクロゴキブリ

メス&オスが1対いたら20000匹いる!?

クロゴキブリなんて目じゃないくらいに繁殖力が高いのが、おもに工場や飲食店で見られるチャバネゴキブリです。

チャバネゴキブリについては、その繁殖力を知ることのできる「ゴキブリ算」(石井,1976)なるものがあります。
一対の成虫が120日の寿命の間に、40個の卵が入った卵鞘(らんしょう)を5回産むとします。すると、幼虫は200匹生まれます。

生まれる幼虫数(子ども世代)

卵鞘一つに入った卵の数40個×卵鞘5個=幼虫200匹

200匹中、オスとメスは1対1ですべて生き残ると仮定します。その中のメス100匹が、一生の間に卵40個が入った卵鞘を5回産むとすると、孫の世代には20000匹にもなるのです。

生まれる幼虫数(孫世代)

卵鞘一つに入った卵の数40個×卵鞘5個×メスの幼虫100匹=幼虫20000匹

これはあくまで、単純化のためにチャバネゴキブリの成虫が約120日間の寿命を全うし、卵がすべて孵化すると仮定した場合の生理的な増殖能力です。実際には、ひとつの卵鞘内に卵が30個も入っていなかったり、孵化しない卵もあったり、生育途中で死んだりすることもあるので、これよりも小さな数になるでしょう。

とはいえ、チャバネゴキブリのメスとオスが1対いたら、100匹どころじゃない! 200、300いやいや1000、2000……と想像するだけで恐ろしくなるくらいの数が生息しているのです。

1匹いたら20000匹いるかもしれないチャバネゴキブリ

1週間にわずか3gのえさを与えるだけで、総数10匹のチャバネゴキブリ(メス)が1500匹に増殖するという実験結果(大野・辻󠄀,1972)もあるんですよ。もし、チャバネゴキブリが家にいたら結構な大群と暮らすことになりますね。

チャバネゴキブリの繁殖力がすごい理由

チャバネゴキブリはゴキブリの中でも驚異の繁殖力があります。

その大きな理由は、生育期間の短さ。
チャバネゴキブリは、クロゴキブリと比べると、卵の期間は半分、幼虫の期間は10分の1程度で、成虫になるのです。

卵期間(27°C) 卵期間
(越冬時)
幼虫期間 成虫の寿命
クロゴキブリ 41日 8カ月 1~2年
(越冬含む)
90日~180日
チャバネゴキブリ 20日 40日~50日 130日~150日
クロゴキブリ チャバネゴキブリ
卵期間(27°C) 41日 20日
卵期間(越冬時) 8カ月
幼虫期間 1~2年(越冬含む) 40日~50日
成虫の寿命 90日~180日 130日~150日

(辻󠄀,2018『薬局 2018 Vol.69、No8』より抜粋)
※越冬休眠とは、生命活動を停止させて冬越すること
※ヤマトゴキブリは卵の状態では越冬しない

ちなみに、ゴキブリの中でもとくにチャバネゴキブリは隠れ場所に密集して生息しているんじゃが、密集したほうが、生育が促進されることがわかっておる。なぜか、はまだ解明されておらんが、生育が促進されるということは、それだけ世代の繰り返しが速くなって、増殖できるわけじゃ。

また、卵の数や産卵サイクルなどの違いも、繁殖力に影響を与えています。
卵について詳しくは⇒『ゴキブリの卵の特徴は?産卵や孵化時期、駆除方法についてもご紹介!』
寿命について詳しくは⇒『どれくらいの期間生きるの?巣・寿命などのゴキブリの生態を知ろう』

ゴキブリはどうやって交尾をするのか?

旺盛な繁殖力の大元になるのが求愛行動です。

ゴキブリの求愛行動は、ほかの昆虫と同じように、オスがメスに対して一生懸命にアピールすることから始まります。

ゴキブリの求愛行動

例:クロゴキブリ
1.オスが翅を持ち上げて震わせ、腹部背面をメスに見せつける

クロゴキブリが翅を持ち上げて震わせ、分泌物(性フェロモン)の出た腹部背面をメスに見せて求愛行動をする

2.メスはオスの背面の分泌物を舐める

クロゴキブリのメスがオスの背面の分泌物を舐める

3.2のすきに、オスは体をメスの下に滑り込ませて交尾する

チャバネゴキブリの場合も同じような体勢で交尾を行います。昆虫学者の石井象二郎氏の著書『ゴキブリの話』には、「触角を交互に触れ合わせているうちに、やおら、雄は雌の前で方向を180度回転して翅をほぼ垂直に立てて、腹部の背面をメスの前にさらす。雌は雄の背面にまたがって、腹部背面をなめる。オスの腹部第7・8節の背面には分泌腺があり、その分泌物をメスになめさせる。そのうち雄は、後ずさりして、交尾に至る」と記載されています。

クロゴキブリやチャバネゴキブリのオスの背中から出る分泌物は、性フェロモンです。フェロモンというと香りをイメージしがちですが、これは、体表の脂質(ワックス)に存在する不揮発性の物質です。分泌液には糖類が混じっており、蜜のような美味しさに思わずメスはペロリと舐め、うっとりしている間に、オスはちゃっかりと交尾するというわけですね。また、メスが揮発性の性フェロモンを出す種類もあります。

また、前出の『ゴキブリの話』(石井象二郎・著)によると、オガサワラゴキブリのように雄が雌の背中に這い上がるものや、ハイイロゴキブリのように、メスに相手にされなかったり、交尾がうまくいかなかったりしたときに、摩擦音を出して求愛する種類もいるとのことです。

背面の分泌液は、メスだけではなく、オスや幼虫も好きな味なんだそうですよ。ボクも1回舐めてみたいなあ……。はっ冗談です、冗談です。そ、そんなゴキブリの背中を舐めるだなんて考えられないです!

ゴキブリは1回の交尾で一生分の卵を産める!

交尾の仕方には多少のバリエーションがありますが、1度の交尾で一生分の産卵をまかなうことができるのは、どのゴキブリにも共通した特徴です。昆虫の世界においては、一般的な生殖の仕組みでもあります。

メスは溜め込んだ精子を小出しにして受精する

ゴキブリメスの卵巣

簡単に説明すると、交尾によってメスの体内に注入された精子はいったん受精嚢(のう)という場所に蓄えられます。メスは、産卵の直前に受精嚢から精子を小出しにすることで受精するのです。産卵を重ねるうちに、卵の数が減る可能性があるので、何度か交尾する場合もあると言われています。

ゴキブリはメスだけでも繁殖できる!

メスだけで繁殖できるゴキブリ

ゴキブリの中には、オスと交尾をすることなく、メスだけで遺伝的に似た子どもを産む「単為生殖」を行うことができる種類がいます。一般家庭で見られるワモンゴキブリもその一種。ワモンゴキブリは、交尾によって卵を産む一方で、時に単為生殖することで知られています。

2017年3月には、北海道大学の研究チームが、ワモンゴキブリのメスが3匹以上いると(オスが一切いない状態)単為生殖が促進された、という研究結果を発表しました。( Zoological Letters

ワモンゴキブリのほかにも、野外に生息しているトビイロゴキブリやオガサワラゴキブリも単為生殖を行います。オガサワラゴキブリ(2系統に分かれているうちの片方)は、もっぱら単為生殖で繁殖します。

ゴキブリはメスだけでも増えていく! と聞くと、ギャーっと叫びたくなりますよね。しかし、単為生殖は昆虫の世界では取り立てて珍しいことではありません。私たち人間からすると、特殊なことのように見えますが、単為生殖は生物の生存戦略のひとつ。そう思うと、ゴキブリが3億年前から生き続けているのも頷けますね。

まとめ

ゴキブリは、食物連鎖の一員ですから、天敵によって捕食されたり、寄生されたりもします。ところが彼らの繁殖能力は、それらによる損失を上回っています。さらに、天敵の少ない屋内では、よりいっそう繁栄できるわけですね。
天敵について詳しくは⇒『アシダカグモにハチ!?ゴキブリにも天敵はいる』

最後に、彼らの繁殖力をおさらいしたいと思います。
「1匹いたら100匹いる」などと言われることがありますが、現実はもっと厳しい! と言わざるを得ません。

一般家庭でもっともよく見るクロゴキブリは、1匹いたら100匹以上いる可能性があります。

1匹いたら100匹以上いるかもしれないクロゴキブリ

ただし、クロゴキブリなどの大型種は、屋内外を自由に行き来しているので、必ずしも屋内でどんどん増殖していくとは限りません。ちなみに、屋外には山のようにいます。

そして、飲食店や工場でよく見るチャバネゴキブリは、オスとメスの1対がいたら20000匹いる可能性があります

1匹いたら20000匹以上いるかもしれないチャバネゴキブリ

チャバネゴキブリは、一般家庭ではあまり見られませんが、もしも家の中にいたとしたらどんどん増殖していく可能性が高いので、即駆除するようにしましょう。

当サイトでは効果的な駆除方法(詳しくは⇒『「ベイト剤」の効果的な設置場所・時期とゴキブリを寄せ付けない4つのポイント』をご覧ください)についても詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。

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