ゴキブリが薬になるって本当?薬用ゴキブリの歴史

投稿日: 2019/2/15

みなさんは、ゴキブリが「薬」として世界中で利用されてきたことをご存知じゃろうか?
なかでも中国では、さまざまな症状に処方されてきたんじゃ。もちろん、日本でも薬用ゴキブリは使われておった。今回は、ゴキブリの知られざる一面である、薬用ゴキブリの種類や薬効について見ていこう。


薬用ゴキブリの種類と薬効

2000年前から薬用だったサツマゴキブリ

ゴキブリは古くから薬として用いられてきました。
とくに中国では、2000年前以上前に出版された医学書である『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)をはじめ、数々の医学書においてその薬効が紹介されてきたのです。

『神農本草経』では、ゴキブリは「䗪虫(しゃちゅう)」という生薬名で紹介されています。䗪虫はほかにも、地鼈虫(じべつちゅう)・土鼈虫(どべつちゅう)・土中・臭中母子などさまざまな呼び方があります。
ちなみに、「鼈(べつ)」はすっぽんを意味しており、土鼈虫は、土にいるすっぽんのような形をした虫、ということです。

䗪虫とは、翅のないゴキブリ数種の雌を指しており、なかでもサツマゴキブリ・チュウゴクゴキブリなどが広く用いられました。


翅のない「サツマゴキブリ」。中国やインドネシアなどをはじめ、日本では四国・九州以南に生息している。近年では本州での生息も確認されている。

利用の際には、おもに虫体を粉末状にしたもの単体か、ほかの生薬と混合して処方されました。また、野外でその都度捕獲するのではなく、薬として使用するために特定の餌で飼育処理していたと考えられます。

『昆虫食文化事典』(著・三橋淳博士)によると、䗪虫には、血の流れが悪い状態を指す「瘀血(おけつ)」を解消する効果や、毒を分解して腫れを解消する効果があるとのことです。

中国で使用されてきた薬用ゴキブリたち

中国では、サツマゴキブリやチュウゴクゴキブリ以外のゴキブリにも薬効があると考えられていました。

中国の薬用ゴキブリ例

種名 効果
サツマゴキブリ 血流改善作用
解毒作用
腫れを減少させる作用 など
チュウゴクゴキブリ 血流改善作用
解毒作用
鎮痛作用 など
トウヨウゴキブリ 血流改善作用
解毒作用
腫れを減少させる作用
体調不良(風邪・胃腸病)を整える作用 など
ワモンゴキブリ 解毒作用
腫れを減少させる作用
抗がん(腎臓がん)作用 など
コワモンゴキブリ
チャバネゴキブリ
解毒作用
腫れを減少させる作用
抗がん(腎臓がん)作用 など

参考/『昆虫食文化事典』
※上記の種名と効果は、中国で使用されてきた薬用ゴキブリの例であり、すべてを網羅するものではありません。

日本の屋内によく出るワモンゴキブリやチャバネゴキブリも入っていますね。だからといってくれぐれも、家に現れたゴキブリを捕まえて薬用にしてみようなどとは考えないでくださいね。
家に出るゴキブリの種類について詳しくは⇒『ゴキブリ4種の生態|生息地・成長・行動・寿命の違いとは?』

中国では現役!の薬用ゴキブリ

現代中国でも薬用として使われているゴキブリがあります。それは、サツマゴキブリです。

中国における医薬品の規格基準書である『中華人民共和国薬典』にも、サツマゴキブリが配合された中成薬(日本でいう漢方薬)が掲載されています。『中華人民共和国薬典』に掲載されているということは、国家がその中成薬の安全性と効用を認めているということです。

『薬になる!?ゴキブリ―薬になる虫たちシリーズ①』(著・鈴木覚)によると、2000年版の『中華人民共和国薬典』には、サツマゴキブリが配合された中成薬が6種類あります。  
・大黄シャ虫丸 (だいおうしゃちゅうがん)
・止痛紫金丸 (しつうしきんがん)
・鼈甲煎丸 (べっこうせんがん)
・止血止痛散(しけつしつうさん)
・少林風湿跌打丸(しょうりんふうしつてつだがん)
・中風回春丸(ちゅうふうかいしゅんがん)

例えば、大黄シャ虫丸は、肝炎や肝硬変、肥満性脂肪肝、乳腺炎などの症状に処方された例が、中国の医学誌で公表されています。

いまの中国では、薬用ゴキブリの養殖が盛んなんじゃ。近頃では、AIで制御している養殖工場もあるんじゃよ。


日本における薬用ゴキブリ

日本でもゴキブリを薬用として使っていたのかというと、答えはYES。

古くは、平安時代の漢和辞典である『新撰字鏡』や薬物事典の『本草和名』、医学書である『医心方』に、「於女虫」(おめむし)という名で記載されており、薬用ゴキブリに関しても記されています。

ただし、おもに使用されていたのは、中国から輸入した薬用ゴキブリ(サツマゴキブリやチュウゴクゴキブリ)だったと考えられています。江戸時代には、清国から輸入した記録が残されています。

どのように使われていたのかというと、

通常乾燥虫体で取引され、使用法としては、熱湯で煮出したり、焙ったり、酒に漬けたり、粉末にしてそのまま飲んだり、丸薬にするなどいろいろなやり方がある。適応症としては腹部内血管の炎症、血流不全によるしこり、月経異常などがある(内藤,1842)。(『昆虫食文化辞典』より引用)

というように、実にさまざまな方法で使用されていました。

昔の長野県や佐賀県では、薬用ゴキブリの成虫を潰してしもやけに塗っていたという記録もあります。ほかに薬はなかったのかな……。

現在でも、漢方薬局でサツマゴキブリが販売されていることがあります。

世界の薬用ゴキブリ

中国では2000年以上も前から、ゴキブリが薬用として利用されてきましたが、そのほかの地域ではどうだったのでしょうか?

実は、世界各地において、薬用ゴキブリの記録が少なからず残されています。
例えば古代ギリシャでは、「ゴキブリの内臓と油を混ぜたものを耳の穴に流し込めば、耳の痛みが軽減する」という内容が、当時の薬学・医学の基本文献であった『薬物誌』に残されています。

ほかにも、ブラジルやメキシコ、ロシアなどでも伝統的な薬用昆虫としてゴキブリが用いられてきた記録があります。
また、『ゴキブリ大全』(青土社)によると、比較的近年においても、アメリカでは利用されていたことがわかります。

1886年のある日の「ニューヨーク・トリビューン」紙には、ルイジアナ州の奇妙な治療法が掲載されている。破傷風にはゴキブリ茶を処方し、煮たゴキブリを傷口に湿布するというものなどである。(中略)この記事から数十年後には、ニューオリンズの伝説的シンガー、ルイ・アームストロングが、病気になるといつもゴキブリの煮汁を飲まされたと回想している。(『ゴキブリ大全』より引用)

薬用ゴキブリは、さまざまな地域で利用されてきましたが、現代の西洋医学では、その効用は認められていないといえます。

まとめ

いまでは、薬になるゴキブリがあると聞くと「えぇっウソ!?」といいたくなりますが、実際に使用されてきた歴史があるのです。

中国で古くから用いられてきたのは、「䗪虫(しゃちゅう)」と呼ばれる、翅のないゴキブリ数種の雌。なかでもサツマゴキブリ・チュウゴクゴキブリが広く利用されてきました。
日本でも、おもに中国から䗪虫を輸入して使用していたという記録が残っています。

では、現代ではどうかというと、中国では、サツマゴキブリが現役の医薬品に使用されていますが、日本では医薬品として認められていません。一部の漢方薬局でサツマゴキブリが販売されていることがある程度です。ヨーロッパやアメリカなどの西洋においても、医薬品としては認められていないといえます。

とはいえ、将来的にはどうなるかわかりません。というのも、ゴキブリの何かが医薬品として広く認められる可能性を示唆する研究例があるのです。
それは、英国総合微生物学会(2010年開催)で発表された、「ワモンゴキブリの中枢神経は、人間にとって致死性のある細菌を死滅させる天然の抗生物質を作り出す」という研究です。

もちろん、実際にそれらの抗生物質が医薬品として生かされるのかは今後の研究によりますが、ゴキブリが私たちの命を救ってくれるかもしれない……と思うと、なんともいえない気持ちになりますね。

今回は、おもに薬用ゴキブリについて詳しく見てきました。漢方薬局で売られているサツマゴキブリを試してみたい場合には、必ず、医師に相談してからにしてくださいね。くれぐれも、身近なゴキブリが何かに効くかどうか試すなんてことはしないようにしましょう。

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